形成外科 (保険診療)

形成外科とは、身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対し、あらゆる手法や特殊な外科的手技を駆使して、機能のみならず形態的にもより正常に、より美しく改善することによって、皆様の生活の質 “Quality of Life” の向上に貢献する、外科系の専門領域です。
※日本形成外科学会HPより

当院の形成外科(保険診療)

当クリニックでは、形成外科・皮膚科領域の一部の疾患に対して、保険診療を行なっております。当院では、下記に記載する疾患では、保険診療の対象となります。

保険適応の対象となる形成外科疾患

  • 色素性母斑(ホクロ)
  • 粉瘤(アテローム)
  • 脂肪腫
  • 瘢痕拘縮(傷跡で運動障害を伴うもの)
  • 臍ヘルニア(でべそ)
  • 腋臭症(重度のもの)
  • 眼瞼下垂症(視野に障害がある場合)

※状態によっては、保険適応ができない場合もございますので、一度来院いただき、医師へご相談ください。一般的に、日常生活に支障がなく、美しく若々しくなりたいという美容目的の治療は、保険適応ではなく自費診療となります。

形成外科疾患(保険適応)〜症状と治療〜

いわゆる「ホクロ」で、生まれつきあるものや、後々出現してくるものもあります。ホクロは黒色や茶色のもので、大小さまざま、表面がざらざらしていたり、凹凸のもの、毛が生えているものまであります。
小さい色素性母斑は悪性化することはほとんどありませんが、急に大きくなったもの、色調に濃淡があるもの、形状が左右対称でないもの、境界が不明瞭なもの、ホクロから出血するものの場合には、悪性化の可能性があるため、早めに形成外科を受診していただく必要があります。
また、先天性の巨大な色素性母斑では、悪性化(皮膚癌になる)リスクが通常より高く、これも専門病院での早めの治療開始が必要となります。
ホクロについては、診察の上で大きさ、色調、ホクロ表面の状態などによって保険適応か判断させていただきますので、受診の上ご相談ください。

<治療>

切除縫合
※基本的に、炭酸ガスレーザーを用いた治療は保険適応となりません。

身体のどこにでもできる良性の皮膚皮下腫瘍です。
「脂肪の固まり」などとも言われます。硬く触れ、真ん中にやや黒っぽい穴が見られることがあります。
皮膚が皮内や皮下に落ちこんで袋を形成し、その中に粥状の垢や皮脂などが貯まってできた固まりです。
放置すると徐々に大きくなり、時に野球ボールほどに拡大することもあります。細菌感染を起こすと、急に大きく、赤く腫れ上がり、痛みを伴うこともあります。皮膚が破れると膿と臭いのある粥状物が排出します。粉瘤は感染を起こすことがありますので、感染がない状態で摘出するのが一般的です。

<治療>

感染がある場合:抗生剤の内服・外用、切開排膿。
感染のない場合:手術(摘出術)

脂肪腫は、皮下に発生する軟部組織の腫瘍の中では多くみられる良性腫瘍です。
身体各部に発生しますが、背部、肩、頸部などに多く、次いで上腕、臀部、大腿などのからだに近い方の四肢に多くみられます。小さなものから、直径が10センチ以上に及ぶものまで様々です。通常、痛みなどの症状は無く、皮膚がドーム状に盛り上がり、皮膚の下に、柔らかいしこりとして触れます。
診断は、臨床症状と、画像検査で行います。画像検査にはエコー検査、CT検査、MRI検査があります。区別を要する疾患として、皮膚由来の嚢腫や軟部組織の肉腫(悪性腫瘍)などがあります。画像上、悪性の分化型脂肪肉腫と鑑別が困難なこともあり、摘出し、病理組織学的検査を行います。

<治療>

脂肪腫の治療は手術による摘出です。
摘出術では、腫瘍の直上を、ほぼ腫瘍の直径に一致するように切開し、被膜を破らないように周囲組織から剥離して、摘出します。摘出後は、血腫(血が溜まる)を予防するため十分に止血し、必要に応じてドレーンを挿入、圧迫固定します。

瘢痕拘縮は、傷跡が引きつれてつっぱり、思うように関節が動かせなくなる状態をいいます。瘢痕拘縮は、肥厚性瘢痕(ミミズ腫れのような傷跡)やケロイドが関節部や首など皮膚が引っ張られる場所にできた場合に、引きつれができてしまった状態です。関節部に瘢痕拘縮を生じてしまうと、関節を伸ばしにくくなります。
指、手首、足首、膝、肘、腕、脚、首、脇などが好発部位となります。
※関節の運動制限を伴わないものでは、自費診療となります。

<治療>

軽度のもの:ステロイドテープ、ステロイド注射(保存的治療)
中等度以上のもの:手術(瘢痕拘縮形成術)
「瘢痕拘縮」は、関節部や首など皮膚に緊張のかかる部位にできるため、引っ張られる方向に力がかからないように、向きを変えたり、ジグザグに縫合することで(Z形成術やW形成術)、引っ張られる力を分散し引きつれを解除します。時には近くの皮膚を移動させる、皮弁形成術が必要となることもあります。

臍ヘルニア、いわゆる「でべそ」は、臍窩部の皮膚と皮下の瘢痕組織(ヘルニアの袋)が突出した状態になっている状態です。
「でべそ」の手術は、臍の突出部の皮膚を切除し、ヘルニアの袋を腹腔内へ戻し、出てこないように閉鎖します。臍の余った皮膚は切除し、臍の穴の中にたたみ込んで縫い付け、臍窩(おへそのくぼみ)を形成します。個人差はありますが、理想的には縦長のおへそを形成します。皮膚縫合線は臍の穴の中だけになりますので、ほとんど傷跡はわからない状態になります。

<治療>

手術は局所麻酔で行い、手術時間は約30分間〜1時間程度です。
術後は、翌日からシャワー浴が可能となります。術後は、腹圧がかかるような動作(重いものを持ち上げる、子供を抱え上げる、腹筋などの筋トレをする等)は避けていただく必要があります。
※局所麻酔での手術が可能な年齢は、中学生以上です。
※臍ヘルニアの大きさ、年齢などによっては、局所麻酔での手術が行えない場合があります。その場合は、提携する大学病院、近隣の施設をご紹介いたします。

腋臭症は、わきの下が悪臭を放つ状態を言い、いわゆる「わきが」と呼ばれます。欧米ではある程度生理的な現象として認識されていますが、東アジアでは臭いや衣服の黄ばみに嫌悪感を抱く傾向があります。
皮膚にはエックリン腺とアポクリン腺の2種類の汗腺(汗を出す器官)がありますが、腋臭の原因となるのはアポクリン腺の分泌亢進です。アポクリン腺はわきの下だけでなく、外耳道、まぶたの縁、鼻、乳輪、外陰部などの毛穴にも分布し、その汗に含まれる脂質・タンパク質が皮膚表面の細菌に分解され、特有の臭いを発生するものとされています。
アポクリン腺の発達には遺伝的要因、性ホルモン(思春期から発達)などが関与するほか、腋毛の量、精神的要因(ストレスや緊張など)、スポーツによる発汗なども臭いの発生に関係していると考えられています。

<治療>

(1) 保存的治療
腋臭症の治療は、まず不規則な日常生活や喫煙習慣など生活習慣を見直すところから始まります。腋毛の脱毛や制汗剤も一定の効果を出すことがあります。ボツリヌス毒素の局所注射や塩化アルミニウム溶液の外用も有効とされています。レーザー脱毛、イオン導入法(イオントフォレーシス)もある程度の効果が得られており、最近ではマイクロ波を利用するアポクリン腺を破壊する治療機器の有効性も報告されています。

(2) 手術療法
最も効果が期待できる治療法は手術療です。手術の適応になるのは、臭いが強い場合です。臭いの感じ方には個人差があるので、患者さんはとても悩んでいるにも関わらず、においの程度がごく軽い(ない)場合には、手術はお勧めしません。また、汗の量が多くてお困りの方には「多汗症」という診断となり治療が異なります。ボツリヌストキシン注射や胸部交感神経節ブロック(または切除)法をおすすめすることがあります。
手術はわきの下の皮膚を切開し、皮膚の裏のアポクリン腺を直接確認しながら切除する方法が最もよく行われています。最近は剪刀の代わりに切除用の特殊な器械(クアドラカット剪除吸引器、超音波メス、脂肪吸引器など)を用いる方法もあり、このような機器を使用する場合は自費診療となります。また、わきの下の皮膚ごと切除し縫合する切除法や、それらを組み合わせた方法などもあります。

手術により、90%以上の方は、強い臭いは減少します。ただし臭いが完全に無くなるわけではなく、術前の10~20%程度の臭いが残ることもあります。
手術後に起こりうる合併症は、皮膚の下に血液が貯留する血腫や、感染、皮膚壊死などがあります。手術後は、血腫の予防のために、ガーゼをわきの下に厚くあてる特殊な固定法を行います。術後は、腕を動かし過ぎないなどの生活上の制約が一定期間、必要になります。
また、手術後数カ月の間は、傷跡の引きつれ、隆起や色素沈着などを生じます。その後、徐々に改善しますが、手術による瘢痕はある程度残ります。また副次的な作用として、腋毛が減少します。それらのことを考慮の上、手術療法を行うか、検討する必要があります。

※料金は全て税込です。

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