眼瞼下垂(形成外科)

加齢性(退行性)眼瞼下垂と眼瞼皮膚弛緩症

加齢性(退行性)眼瞼下垂は、神経障害や筋性麻痺などの特別な原因がなく、加齢により挙筋腱膜が菲薄化したり、瞼板付着部から外れたりすることで、瞼をあげる挙筋の収縮が瞼板に伝わらなくことで生じます。
一方で、瞼の皮膚のたるみが原因で、瞼が下がったように見えるものは偽性眼瞼下垂(眼瞼皮膚弛緩症)といいます。

  • 加齢性眼瞼下垂症(腱膜性眼瞼下垂)。加齢またはその他の要因により、眼瞼挙筋腱膜が瞼板から外れ、あるいは離開し、瞼が上がらない状態。

  • 偽性眼瞼下垂(眼瞼皮膚弛緩症:皮膚のたるみが主体)。加齢によりたるんだ眼瞼皮膚が、瞼縁を超えて下垂している。

眼瞼下垂症の定義

MRD(瞳孔中央から上眼瞼縁までの距離)が3.5mm以下となった状態で、下垂の程度によって、次のように分類されます。

眼瞼下垂症の重症度分類

軽度 MRD 2〜3.5mm
中等度 MRD0〜1.5mm
高度 MRD<0mm

眼瞼下垂症の症状

ものが見えにくくなる視野障害が主体です。
車の運転がしにくい、テレビがみにくい、黒板がみえない、道路の信号がみにくい、眠たそうといわれる、原因不明の頭痛、肩こりが治らないなどの症状がみられます。このように、視野に関連する生活の質が障害されている場合、保険適用での眼瞼下垂手術が可能となります。
美しく、若々しい目元にしてほしい、二重瞼を形成してほしい、という美容的なご要望の場合には自費診療となります。

先天性眼瞼下垂

生まれつきみられる眼瞼下垂症は、先天眼瞼下垂といいます。生まれつき眼瞼挙筋(がんけんきょきん)というまぶたを挙げる筋肉の力が弱かったり、まぶたを挙げる筋肉を支配している神経の異常が原因です。先天性眼瞼下垂は、視力の発達に悪影響が出るため、学童期に手術が行われることが一般的ですが、時に成人後まで放置されているケースもあります。当院ではこのような先天性眼瞼下垂に対する手術(挙筋前転術または筋膜移植)も行なっております。

眼瞼下垂症の治療

眼瞼下垂の治療は、下垂の原因、下垂の程度、皮膚のたるみ具合などに応じて決定されます。
当院で行なっている眼瞼下垂症手術は、重瞼線部皮膚切除法、眉毛下皮膚切除術、筋膜移植術、吊り上げ術などです。

(1) 加齢性眼瞼下垂症:眼瞼下垂手術(挙筋前転術)
(2) 皮膚弛緩症:眉毛下皮膚切除術
(3) 先天性眼瞼下垂:眼瞼下垂手術(筋膜移植術)

  • 62歳 加齢性眼瞼下垂症に対する挙筋前転術
    瞼の開きが改善し、見やすくなった。
    【合併症・リスク】疼痛、腫脹、内出血、血腫、感染、創離開、左右差、ドライアイ、閉瞼不全(兎眼)、矯正不足、下垂の再発など

  • 60歳 加齢性眼瞼下垂症に対する挙筋前転術
    瞼の開きが改善し、見やすくなった。
    【合併症・リスク】疼痛、腫脹、内出血、血腫、感染、創離開、左右差、ドライアイ、閉瞼不全(兎眼)、矯正不足、下垂の再発など

  • 65歳 眉毛下皮膚切除術の手術前後
    弛緩した眼瞼皮膚がとれ、特に外側の重みが改善した。眉毛下の傷跡も目立たない。
    【合併症・リスク】疼痛、腫脹、内出血、血腫、感染、創離開、左右差、ドライアイ、閉瞼不全(兎眼)、傷跡など

  • 68歳 眉毛下皮膚切除術の手術前後
    全体的な瞼の重量感が改善し、見やすくなった。
    眉毛下の傷跡も目立たない。
    【合併症・リスク】疼痛、腫脹、内出血、血腫、感染、創離開、左右差、ドライアイ、閉瞼不全(兎眼)、傷跡など

  • 15歳 先天性眼瞼下垂に対する筋膜移植
    術後4ヶ月で、視野障害が改善し学校生活が楽になった。
    【合併症・リスク】疼痛、腫脹、内出血、血腫、左右差、ドライアイ、閉瞼不全(兎眼)、下垂の再発など

  • 48歳 先天性眼瞼下垂症に対する筋膜移植
    視野障害が改善し、日常生活が楽になった。
    【合併症・リスク】疼痛、腫脹、内出血、血腫、左右差、ドライアイ、閉瞼不全(兎眼)、下垂の再発など

当院の眼瞼下垂診療

眼瞼下垂症は、治療法が診療科や施設間で若干異なり、手術方法の選択や経験の差で仕上がりも変わってまいります。形成外科と眼科の連携も大切な領域です。当院では、前任の福岡山王病院より眼瞼下垂症の手術を多く担当し、これまでに2,000例以上の経験があります。眼瞼下垂症でお悩みの方は、パールスキンクリニックへご相談ください。

【著書】山道光作:眼疾患アトラスシリーズ『外眼部アトラス』(第1版):「眼瞼下垂;偽眼瞼下垂(眼瞼皮膚弛緩症)」,総合医学社, p66-67, 2019年10月

【発表論文(英文)】Yamamichi K, Takagi S, Eto A, Ohjimi H, Infrabrow excision blepharoplasty for dermatochalasis patients can improve headache and stiff neck as well as ptosis repair for aponeurotic blepharoptosis patients. Fukuoka Med Bull. 2020

【講演(国内)】山道光作:講演「専門医が語るアンチエイジングのお話〜眼瞼下垂、シミ、シワ、たるみ〜」, 福岡山王ホール, 福岡市, 2017

【学会発表(国内)】
1. 山道光作、大慈弥裕之、衛藤明子、髙木誠司:加齢性眼瞼下垂症における頭痛、肩こりの改善:眉毛下皮膚切除術と挙筋前転術の比較、第61回日本形成外科学会総会・学術集会、福岡市、2018
2. 山道光作、大慈弥裕之、衛藤明子、髙木誠司:眼瞼下垂症患者における頭痛、肩こりの症状変化:上眼瞼皮膚弛緩症と腱膜性眼瞼下垂症の比較、第30回日本眼瞼義眼床手術学会、大阪市、2019
3. 山道光作、小柳俊彰:化学療法後に眼瞼下垂症手術を施行した2例、第100回九州・沖縄形成外科学会、福岡市、2016
4. 山道光作、植木健太郎:退行性下眼瞼内反症に対する手術法と長期成績の検討、第19回日本抗加齢医学会総会、横浜市、2019

※料金は全て税込です。

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